世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 山口 周 著
内容
昨今、世界のエリートと呼ばれる人たちが美術館の朝ギャラリーに参加したり、芸術大学への進学をしたりしている。世界がものすごいスピートで変化する現代、我々は”美意識”を忘れかけている。
企業には 「サイエンス x クラフト x アート」 の3者が必要
現代の企業の決定の際は”サイエンス”が重視されすぎている。これは「理論的・分析」といった類いだ。そして”クラフト”という、経験に則ったアドバイスも一応重要とされている。しかし”アート”はどうか。これは「直感的」という指標だ。この説明のつかない観点は、サイエンスとクラフトと戦った際にあまりに弱すぎて蔑ろにされがちだ。
サイエンスは模倣が簡単。一方アートはブランドで唯一の価値になる
「サイエンス」は説得力がある一方、同じ分析手法を他にも当てはめることができ、他社が簡単に真似ることができる。しかし「アート」は説明ができない故に他社が真似ることが難しく、それこそアップルのようなブランドとなる。
トップはアート、側近にサイエンスとクラフトがバランスがいい
もちろん、アートだけではダメだ。「直感を信じろ」というと、「論理を全て無視しろ」と捉えかねないが、論理がある上でのアートが必要だ。例えば企業トップはアートが先導し、側近にサイエンスとクラフトがいることで強固な体制となる。側近がアートだと、トップを説得しづらく均衡の取り方が少し難しくなる。
デザイン・コンセプトの考え方
新しい商品を作る時、市場に「迎合」するのでなく、市場を「教育」する意識でデザインやコンセプトを考える事。人は低い美意識から高い美意識へシフトできるが、逆は起きない。グローバルにならざるを得ない現代で、「ここの範囲の人だけに適合する商品」という考えは通用しない。
どんな人におすすめ?
私のように「結果主義」「論理と数字で説明されないと話も聞かない」みたいな人間にオススメだ。これまで「サイエンス」を重要視してきた。「クラフト」は、嫌でも周りの人が年上だから受け入れざるを得なかった。しかし「アート」は、完全に下に見ていた気がする。
評価
自分が若手社員なら、まずは論理力(サイエンス)を鍛え、経験(クラフト)を摘みつつ、自分がリーダーになった時のために感性(アート)を磨いておく事がいいと考える。
感性を鍛えるには芸術鑑賞だけでなく、哲学の勉強もオススメだ。ちなみに自分が歳をとると「クラフト」を教えてくれる人が少なくなる。これまで歴史の学習が大嫌いだったけど、そろそろ勉強し始めようかと考えた。
小説「泥の河」「螢川」 宮本 輝 著
30歳で2つの賞をとった、短編小説
1年で太宰治賞、芥川賞をとった「泥の河」と「螢川」。普段小説は読まないのだが、前述の「美意識を鍛える」一環として小説も読んでみようと思った。
宮本輝(てる)さんは、以前に知人から勧められて「錦繍(きんしゅう)」を読んだ事があり、ストーリーはドロドロしているのにそれをあっさりと、むしろ美しく描き、その世界観に入っていきたくなるような気持ちにさせてくれた。
泥の河・螢川はそれぞれ文庫本100ページ足らずの、かなり短い小説であり、描写は繊細なから、解釈は読者に委ねられる。
泥の河
戦後の大阪の泥の河を舞台にした、小学生の物語。一人っ子で分別ある両親に育てられている主人公と、船で暮らす2人姉弟とその一人母親の交流を描いている。姉弟の母は船で売春をしており、それで生計を立てていた。
生まれながらにして平等という理想は決して通じない環境の3人。主人公の両親は、売春をしている母親の子供と、自分の息子が仲良くなる事に抵抗を抱きつつも、姉弟は何も悪いことをしていないという毅然とした態度で姉弟を迎え入れる。そんな両親に、もうすぐ親になる自分の気持ちと照らし合わせる事ができる。
主人公の男の子に気持ちを重ねる人が多いようだが、両親の目線、そして売春をしている船の母親の気持ちも考えられる。複雑で、でもなぜかドロドロしていない美しい作品。
本はかなり短く、読み手に解釈を委ねている感は否めない。ぜひ映画の「泥の河」も見て欲しい。個人的に映画の方が好きだった。白黒だが1980年代の作品のため、映像も音も非常に美しく、2時間全集中できる作品だ。
それと、若き加賀まりこの姿が圧巻!笑
螢川
富山に住む一人っ子の中学生の少年は、遅くにできた子供であった。ある日父が病気で倒れ、父の昔を知る親友からは「運に突き放された」と言われていた。担保もなしにお金を貸してくれる父の親友や、蛍の大群を見に行こうと誘ってくれる近所の銀蔵爺さん、英子に惚れている自分をからかいながらも、自分を気にかけてくれる旧友の圭太。周りの人間に恵まれている少年だった。
ある日事故で圭太が亡くなった。その描写は驚くほどあっさり描かれ、全く少年の気持ちが文字に書かれていない。次は父が危篤になった。凛としていた父が失語症になって、悔しそうに寂しそうに息子に「ここに居てくれ」と引っ張る、でもそれを「怖い」と感じる。
・・・私は少年の気持ちがよくわかった。強い父親が病気になっても「かわいそう」だなんて思いたくないし、「悲しみ」は全てが終わった後にやってくる。「怖い」という感情は、変わり果てた父が何か別の物体に見えて怖いのだ。
父が亡くなり、金に困っていた母親は、大阪で商売をすることを勧められる。そんなある日、英子を誘って蛍を見に行く事になった少年と母と銀蔵爺さんと英子。その先で蛍の大群に出会い、少年も母も英子と別れて大阪に行くことを悟る。
・・・最後の終わり方が奇妙なほどあっさりしていて、これも読者に解釈を任される。蛍の大群が死と生を表し、主人公たちに決断を示唆する。
どんな人におすすめ?
2作品とも短い作品で、かつ読みやすいため、「小説、ちょっと読んでみようかな」という方にオススメだ。どちらも映画版があるから、本を読んだ後に別の見方で見る事ができる。
1日も早く起業したい人がやっておくべきこと 中野 裕哲 著
内容
起業する際に必要な手続き・マインド・リアルが網羅された本。決して新しい本ではないが、企業前に一度は読んでおくことをお勧めする。
資金の入手方法、事業形態、会社の運営方法(個人事業主含む)など、全て企業の際に必要な知識。「とりあえず、起業したい」人は読み、またビジネスの準備中も手元に置いておきたい。
起業のメリットを解いたり、扇動する本ではないが、「まだ起業するか考え中」の人でも会社運営の実務を知ることでよりイメージがつくだろう。
美人は、片付けから 中谷 彰宏 著
要約
美しい人は佇まいが美しい。家が片付いている人は所作も姿勢も服装も品がある。会社のデスクが汚い人は間違いなく家も汚い。自分のデスクが汚い事で他人に迷惑をかけていると思っていない。
昔は「ものがある事」がオシャレだった。デフレでものがたくさん買える今は、「ものがない事が美しい」。ものを1つ捨てるのと、溢れかえった物から探し物をする時間と労力、どちらがコストがかかるだろうか?一気にものを減らさなくていい、1つ減らせばまた1つ減っていく。
どんな人におすすめ?
美しい人でありたい人にオススメ笑 一番心に残るのは「部屋が散らかっている」と言ってくれるのは親のみ。友達でも言ってくれないから永久に気づかない、そして汚い家に友達は次第に来なくなる。確かに・・・どんなに気を許した友達でも、家に遊びに行き「うわっ、モノ多いなぁ」と心の中で思うものの、指摘はしない。ただそんな部屋ではくつろげないから、あんまり遊びに行きたいと思わないなぁ・・・
評価
私は元々友達から「家にものがないね」と言われるので、この本には「わかる〜〜」というところが多かった。ただ家は綺麗なものの、会社のデスクは散らかる事もあった。多分、「仕事で何をしたらいい」か分からなかったからだろう。デスクが散らかると面白いことに家も散らかった。散らかると疲れるから、疲れてきたらまずは1箇所から片付けを始めよう。
書評まとめ
「読書は量ではなく質」と言いますね。焦ってたくさん読む必要はありません。ただ、「いつも同じ本を読んでいる」人には、いつもと違う作家・ジャンルを読んでほしい。
いつも小説の人はビジネス書。いつも専門書の人はファッション雑誌を。自分が知らない世界のページを開くことで、色々な人の気持ちに共感し、自分自身生きやすくなります。
図書館や古本も活用して、たくさんの本と出会いたいですね!